「図書館員のための財政講座」開催報告

 

2017年8月26日
ビジネス支援図書館推進協議会
報告者: 会長 竹内 利明

   ビジネス支援図書館推進協議会主催で、福岡市経済観光文化局総務部長兼中小企業振興部長の今村寛氏を講師に迎えて「図書館員のための財政講座」~出張財政出前講座with SIMふくおか2030@BICライブラリー」を開催しましたので報告します。

 近年、図書館のビジネス支援サービスは、全国的に導入が進んでいます。一方自治体財政は厳しさが増しています。そこで、図書館が新しいサービスを導入しようとしても、予算の増額は厳しい状況です。そこで、図書館員は、企画立案能力や財政知識の向上が必要と考え企画しました。

  「財政出前講座」は、今村氏が福岡市財政調整課長時代に、主として福岡市職員向けに開講した研修をベースにしていて、地方財政の基本を学びます。非常に評判が良く、福岡市以外の自治体から開講希望が相次ぎました。そして、これを受講した熊本県庁の職員が、2030年の自治体財政を考える演習形式のシミュレーションゲームSIMくまもと2030を作りました。それをベースに今村氏が改良を加えたものが、SIMふくおか2030です。

  午前中の講義では、財政の基本から財政健全化策や予算の在り方など、財政全般について学びました。午後は5~6名一組でシミュレーションゲーム「SIMふくおか2030」を行いました。受講者が自治体の各部局の施策実行と予算責任者である局長に任命されます。社会的課題が増加する中で、限られた予算で、何をやり、何をやらないのか局長同士が話し合いして決めます。その結果を市民の代表である議会(他のグループ)に説明して承認を得ます。財政講座とシミュレーションゲームを同時に行うことで、自治体財政について理解が深まる研修です。昼食をはさんで6時間に及ぶ研修でしたが、あっという間に過ぎました。研修終了後、参加者の有志で「SIMライブラリー2030」を作る相談が始まりました。今村講師から貴重なアドバイスをいただき方向性が見えてきました。来年の情報ナビゲーター交流会で中間報告があると思います。そして、将来ビジネス・ライブラリアン講習会で実施できるようになると素晴らしいと思います。

  なお、本講座を体験したい方は、今村寛氏のfacebookに全国で開催する講習会情報が掲載されるので、お近くで開催される際に参加することをお勧めします。

【開催実績】
1.日 時:平成29年8月6日(日)10時~16時(懇親会17時~18時30分)
2.会 場:機械振興協会 地下1階BICライブラリー 懇親会:おいどん麻布店
3.演 題:図書館員のための財政講座
4.講 師:福岡市経済観光文化局 総務部長兼中小企業振興部長 今村 寛 氏
5.参加費:1,000円(懇親会費3,000円)
6.参加者:21名(懇親会12名)


【参加者の感想】 (提出順)
感想を400字程度でと依頼して書いていただきました。長く書いていただいた方もいますが、そのまま掲載しました。
10名の方にご協力いただきました。ありがとうございました。

 

「3つのことを学びました」 豊田 恭子(ビジネス支援図書館推進協議会理事)

ひとつは、なぜ財政課はシーリングをしたがるのかということ。「どの事業を潰すか」の議論はシンドイし、正直、他部署のことに口出しするのは気が引ける。全事業への一括シーリングは一見平等だし、理解も得やすいし、モノゴトをこじらせずに先に進める便利な手法なのだと理解した。

ふたつ目は、新事業は魅力的に見えるということ。以前は、なぜ市は、既存の大切な事業の予算を削っておいて、お金ばかりかかるようなバカなプロジェクトを始めたりするんだろうと思っていた。でも事業計画をたてる側に立ってみると、既存事業を潰してでも、新しいことを始めることが、市の将来にとっていいことだと主張している自分がいた。

そして3つめ。そこにいる全員が、いかに広いビジョンを共有できるかがキモだということ。それぞれが、自分のお城の大将としてではなく、全体を構成する一員として議論に参加できるかが、町の未来を決める。それは企業にも図書館運営についてもいえることだろう。

最後は自分の仕事へのヒントにもなる学びをいただきました。参加してよかったです。
ありがとうございました。

 

「図書館員のための財政講座に参加して」 吉井 潤(江戸川区立篠崎図書館)

「タブレット普及はICTの活用であり、障害者にとって便利である。ICTを切り捨てるということは図書館の障害者サービスは切り捨てるということか。ICTは図書館の障害者サービスに重要だ」と議員さん役の方が言っていたのは印象的だった。私があえて総務財務局の「ICTの活用による行政サービスの向上」というカードを出して予算をつけないようにしたときに言われたことである。

 図書館員のための財政講座は今村氏による「シーリング方式」と「枠配分方式」の違いについて紹介があった後、収入の範囲に支出を抑えること、市民の納得が得られるようにチェックすることを体験するために、「SIM熊本2030」をアレンジした「SIMふくおか2030」を体験した。これは1チーム6人で構成され、それぞれが架空の局長に任命されることから始まり、社会保障費の増大やその時々に起こる問題に対応していくため、事業を削減するのか、それとも別の新しいことを行うのか皆で決めていくものである。ゲームだったが役になりきっている方もいた。途中で「図書館版を作ったらもっとおもしろいことになる」と思った。今回参加したメンバーと今村氏のアドバイスをもらいながら、来年のビジネス・ライブラリアン講習会で行えるように「SIM図書館2030」を作ってみたいと思った。

 

「図書館員のための財政講座」に参加して 

当館も、新たな予算獲得は難しく、現状維持もままならない状況にあります。財政の基本を学び、厳しい状況下での図書館の在り方を考えたいと思い、参加することにしました。講師の今村寛さんは昨年まで福岡市の財政課長。硬い研修会のイメージは全くなく、基本から財政健全化、予算のあり方など、明るくわかりやすく説明していただきました。

シュミレーションゲーム「SIMふくおか2030」を真面目に楽しんだ後に、大事なことが自分の中に落ちていくのを感じました。夕張の財政破綻の二の舞や、大幅な職員削減、突然の教育文化関連予算削減等を何となく恐れていたのは杞憂であると。なぜなら、財政課も図書館も、首長も各部局長も議員も、共に目指しているのは自治体の幸せです。財政健全化や社会保障費増大などへの対応も、事業廃止も単なる選択ではなく、情報共有と対話を積み重ねた上での決断です。図書館だけで動いていないことを再認識できました。

 

「図書館員のための財政講座参加しての感想」 子安 伸枝(千葉県立図書館)

 教育委員会の出先機関である図書館では、財政担当職員と直接話す機会が少なく、自治体全体の財政の状況を現実感を持って考える機会があまりなかったように思う。図書館のちまちましたお金を削っても、財政健全化に貢献している感覚も薄かった。

 恥ずかしながら、財政講座で、「地方自治体はそれぞれ規模は違うが、問題と解決策は大体一緒」と言われて、解決策があるなら前向きにやりたいなと思った。

 図書館だけでなく、たくさんの部署で「お金がない」のが普通の状況の今、自治体に関わる人はみんな財政講座を聞くといい、と思う。特に、SIMふくおか2030のように、シミュレーションをして、自分事として考える機会が必要だ。

 今回の講座で印象に残ったのは「ビルド・アンド・スクラップ」。やることを決める。それからやめること、圧縮できることを考える。お金がないからやめるのではなく、前向きに考える。これは、SIMふくおか2030をやった後に聞いたので、ものすごく説得力があった。

 SIMふくおか2030のようなシミュレーションは自分の図書館のメンバーともやってみると、意識が共有できていいだろうし、図書館以外の人とも遊んでみたいと思った。また、図書館という業務をモチーフにSIMを作るのも面白そうだ。

 

「図書館員のための財政講座」受講感想 石田 ひろ(豊中市)

 十数年勤めた図書館から離れ、人事交流で財政課員となって4ヶ月。私のための研修だ、と申し込んだ講座は、期待以上に実りあるものでした。

 「新しいことはいろいろ始めたい、ただ長年やってきたこともやめられない」という声は、図書館業界でも時折耳にします。人手が増えないのに業務を増やしたら時間が足りない、と図書館員時代はずっと思ってきました。財政課から見える構造も同じです。歳入は増えないのに事業を増やしたら財源が足りない。

 けれども社会保障費は伸び、施設の耐用年数も迫り、お金はどこからも降ってきません。「良いことをしているつもりなのになぜ理解者が増えないんだろう」と悩むところ、図書館と財政課はよく似ています。

 今回、財政課が図書館(事業課)に伝えるべき内容や話がかみあわない理由を整理していただき、共感と対話へつなぐ道筋がいくらか自分にも見えた気がしました。財政課と視点を共有して一緒に解決策を探せる図書館が増えていくことを願っております。

 

「図書館員のための財政講座」に参加して(感想) 小廣 早苗(佐倉市立志津図書館)

前半は、今村講師が所属する福岡市の財政構造のデータをもとに、財政の基本についての大変わかりやすい解説を伺った。自治体職員の基礎知識として当然理解しているべき内容である。しかし、職務上よく目にする用語も、改めて見ると、いわゆるギョーカイ用語ばかりで、普段いかに理解しているつもりになっているだけだったかを痛感した。

後半は、「SIMふくおか2030」というシュミレーションゲームを通じて、「財政」とは「何を」「何のために」「どうする」アクションなのか、ロールプレイングにより具体的に、かつ、楽しみながら体感することができた。

財政について、行政の内部(管理職でも一般職でも)、市民(議員でも一般人でも)、いずれも目的を同じくして、かつ、フラットな関係の立場として対話できる社会を目指して、議論上の対立をなぜか普段でも引きずってしまいがちではあるが、手段が、いつのまにか目的になってしまっていないか等、常に意識していく必要があると感じた。

そして、「専門用語は、使わない」。相手に「伝わる」ように伝える。さらに、知らないことを知る楽しさを自ら持つ「ライブラリアン」として、社会に参加貢献できるようになれたら、と改めて強く願う機会となった。このような機会を設けていただき、感謝したい。

 

「図書館員の財政講座に参加して」 今井 つかさ

午前は「財政健全化ってなんだろう?」という題の元に財政のしくみやルールを学ぶ。予算は使用していいお金ではなく、支出と収入とセットで考えるべきものとのお言葉が印象的。歳出について基本的にかかる固定費の部分を差し引くと新しい事業を行う為の資金がどの自治体でも厳しい状況であると解った。

午後は午前の講義を実感するゲームSIMふくおか2030を行う。1チーム6名でそれぞれ各部門の局長に任命される。予算に対してやりたい事業の方が多いためどれを削るのかをチームで判断してゆく。そして議会にかける。2020年2025年2030年の5年ごとの状況設定を加味しながら取捨選択を行う。それぞれのチームによってこだわるところや目線が違うことが良く解る。結果的にわがチームは市民の快適さを考えつつわが市に観光等で訪問していただけるよう文化事業にもおもきをおいた形となった。各チーム抱えている事業と5年毎の状況設定は同じだが選択によって全く違った特徴が浮かび上がってきた。自治体の財政のしくみについて理論だけでなくゲームで体感しながら楽しく学べ、大変有益な時間であった。今後の業務に活かしてゆけるようまずはわが自治体の状況を確認しようと思う。

 

「鳥の目を持つ」 三浦 なつみ(墨田区立立花図書館)

「財政」と言う言葉からは「財」の部分が想像できても「政」の部分がわかりません。よくわからないものを知りにいくことが今回の参加目的でした。

前半は講義形式。福岡市を例に歳出を見て、破綻はしないけれど自由に使えるお金は少ないことがわかります。新たな課題ができた場合にはどこのお金を使うのでしょうか、と疑問を持って後半へ。後半は「SIMふくおか2030」というゲームを用いて、架空のえふ市を運営します。局長に任命された私は、1ラウンド目は守りに入ってしまいました。でも全体のことを考えると、だれかが固持するのは逆効果とある瞬間に気づきます。議会の目で他グループを見ると違う話が展開されていて、市がどうなるかは各グループの考えで決まるということを感じるのです。2ラウンド目はスピード感があり、同じ作業をしていても決断が早く、爽快な気持ちになりました。議会の対応も心なしか堂々とするのです。

ゲームを通して前半に学んだ福岡市が近づき、そして徐々に「鳥の目」で全体のことが見えるようになってきました。つい「虫の目」で物事を見がちですが俯瞰する感覚を忘れずに持っていたいと思います。

 

図書館員のための財政講座に参加して(感想) 岩永 知子(相模原市立橋本図書館)

 8月6日(日)に開催された「図書館のための財政講座」に参加しました。

 参加の動機は単純です。“財務課の考え方を知りたい”それだけでした。

 私は、専門職として入庁してすぐに課の財務担当を経験しました。主担当として2年間(サブ担当も含めると3年間)、課の予算要求や必要に応じて流用の調整などを財務課職員や局・部の財務担当職員と行いながら、実務の中で財務事務を学ぶことができました。

 しかし、ふとした時に感じた財務課職員と図書館職員の財政に対する視点の違いについては、明確な答えを見つけられないまま、担当を外れ所属も異動し現在に至ります。

 この視点の違いは何か。もちろん、理由は様々あると思いますが、私はこの講座に参加し、予算を使う目的の違いによるものではないかと思いました。

 講座では、座学だけではなく、普段置かれている立場とは違う立場で市の財政を考える「SIM ふくおか 2030」というシュミレーションゲームをチームで行いました。このゲームを通じて、財務課と事業課の視点の違いを実感することができたのです。

 自課の事業を維持しながら、さらなる図書館サービスの充実を図るために新規事業を始めることは大切なことです。一方で、市のお金は限られています。決して、金額の大きい小さいが問題ではなく、「市として必要な事業は何か」が問題であることを改めて考えることができました。

 では、「市として必要な事業は何か」。この「何か」について、他課と認識を合わせるためには、講師の今村さんが最後に仰った「共有」や「共感」が重要なポイントになります。果たして、自課の予算編成を振り返って考えてみた場合、他課との共有や共感を置き去りにしていないだろうか。図書館主体で物事を考え、他課には共働だけを求めていないだろうか。これまでを振り返ると改善できることはたくさんありますので、これから1つずつ取り組みたいと思います。

 そして、この講座で得たたくさんの気付きを、まず職場の身近な人たちと共有を図っていきたいと思います。

 

「財政出前講座を受講して」 島津 芳枝(宇佐市民図書館)

「財政担当と同じ言語で話したい」「お互いに『わからないだろう』ではなく、悩みを共有したうえで、課題解決もしくは改善につながる道をみつけたい」と思って参加しました。
 今村部長の、福岡市を例とした財政の説明はさすがに具体的でした。医療費や福祉関係など、社会保障費などが増えるのは予想通り。しかし、増え方は想像通りではありませんでした。九州内では最も財政的に豊かと思われる福岡市ですら、かなり予算が圧迫されている。「新しいことをするための予算」を確保する仕組みが「枠予算」であり、シーリングである、とのことでした。
 財政のルールは2つ。収入以上は使えない。市民に使い道が説明できること。
 ルールと課題を理解した所で、4つに分かれてゲーム「SIM2030」。6名が架空のF市の幹部(各部局の部長)に任命され、現在自分の部で持っている3事業をカードに、新たな事業を実施するか、しないかを考えます。総合計画と同様、5年間を2ターン。新規事業が1ターン2枚ずつ降ってきます。社会保障費は増え続けますが、借金カードは2枚だけしか使えません(それ以上使うとゲームオーバー)。

 部長同士で話し合って調整した予算案を、他のチームが「議員」となって査察。議員への説明(市民の理解)がないと、予算は成立しません。

 議員として他のチームを見たことで、次のターンで予算組みを再検討。新規事業と手持ちカードをすり合わせて2回目の予算成立した所で、仕掛けられていた爆弾が作動。各チーム、帳尻合わせに必死になります。事業のビルド&スクラップをすることで、F市の特色が変わることがイメージできました。

仮想の部長でしたが、短時間で「本当に住みやすい町づくりとは何か」を考える機会になりました。直接図書館とは関係ない、と思うのではなく、総合計画の見方を変え、それぞれの部局の課題を図書館が理解して、協働できるか、ということを考える良い契機になり、また、そうしなければならないと感じました。ありがとうございました。

 

 


午前中の財政講座

 


SIMふくおか2030 議会説明