2017年1月30日
報告者:竹内利明(武蔵野大学)

 

  ビジネス支援図書館推進協議会主催で、社会福祉法人アンサンブル会の見学と小椋理事長の講演会と菓匠shimizu見学会を開催しましたので報告します。 
  アンサンブル会は第6回日本でいちばん大切にしたい会社大賞「実行委員特別賞」受賞しています。
なお、終了後、ほとんどの参加者が、箕輪町図書館主催で法政大学大学院坂本光司教授を基調講演にお招きした「キャリアデザイン講演会」に参加しました。これは図書館に坂本教授をお招きした講演会の第3弾です。
  アンサンブル会見学については、駅から車移動になるため、タクシー乗り合わせ、または地元参加者に送迎をお願いしてアットホームな雰囲気の見学会になりました。


平成28年12月15日(木)13:30~
(1)アンサンブル伊那見学会 13:30~15:30
      主催:ビジネス支援図書館推進協議会 後援:長野県立図書館、箕輪町図書館

   会場:社会福祉法人アンサンブル会伊那(伊那市西箕輪8075-2)
   参加者18名(図書館関係者9名)
   小椋理事長講演と施設見学

(2)菓匠Shimizu見学会 16:00~16:30
      主催:ビジネス支援図書館推進協議会 後援:長野県立図書館、箕輪町図書館

   店舗にて、清水社長から説明・見学・買い物
   参加者17名(図書館関係者9名)

(3)キャリアデザイン講演会 18:00~20:30
      主催:箕輪町図書館 後援:長野県立図書館、ビジネス支援図書館推進協議会

   会場:箕輪町図書館(箕輪町文化センター)
   参加者52名(図書館関係者18名)
   18:00~18:10 挨拶
   18:10~19:30 基調講演:「人を大切にする企業」とキャリアデザイン
           講師:法政大学大学院政策創造研究科教授坂本光司氏
   19:30~19:40 休憩
   19:40~20:30 鼎談  「地域を元気にする企業とキャリアデザイン」
           坂本光司氏(法政大学大学院政策創造研究科教授)
           清水慎一氏(株式会社菓匠Shimizu代表取締役社長)
           竹内利明氏(武蔵野大学教養教育リサーチセンター客員教授)


参加者の感想

☆図書館員
 「図書館員のための企業見学会」と「キャリアデザイン講演会」に参加して  
 平成28年12月15日(木)、ビジネス支援図書館推進協議会主催の標記イベントに参加しました。 
  企業見学会では、まず伊那市の社会福祉法人アンサンブル会にお伺いし、小椋年男理事長のお話をお聞きしたほか、広い事業所内を見学させていただきました。小椋理事長のお話で特に印象に残ったことは、障害者自立支援法には「自立」という言葉の定義(理念)が無いため、アンサンブル会は自分たちで「自立」の定義を考えたという点です。その定義とは、「1.定職があること、2.定住する場があること、3.それらを自らの経済力で営むこと」の3点であるといい、それらはまさにアンサンブル会が取り組んでいる、農作業やカフェレストランでやりがいのある仕事をし、そこで得た賃金を以ってグループホームで生活をするという事業が集約されている言葉でした。しかしこれは、障がいの有る無しに関わらず全ての人に通じることであると感じたので、この先何らかのサービスを行う際の一つの基準として自身の中に留めておこうと思いました。 
また夜には、坂本光司氏(法政大学大学院政策創造研究科教授)による「人を大切にする企業とは」と題した講演で、ビジネスの世界で今だからこそ大切にすべき理念をお話しいただいたのに続き、竹内利明氏(武蔵野大学客員教授)と清水慎一氏(菓匠Shimizu代表取締役社長)の対談では、清水氏が自身の家業と向き合い、生き方をどのように変化させていったのかを飾らない言葉で語っていただけました。  
  今回の見学会と講演会で得たものはたくさんありますが、なかでも「社会には多様な人々がいて、それぞれに課題を持ち、解決のために一生懸命に頑張っているということ」に改めて気が付かされたことが一番大きかったように思います。それらはもちろん頭ではわかっているのですが、実感として感じるにはやはり図書館の中だけに居たのではなかなか難しいことなので、ビジネス支援サービスへの取組みを考えている図書館員はぜひこうした機会を活用してどんどん街へ出てほしいと思います。
  長野県内でもビジネス支援サービスを展開する図書館が少しずつ増えてきており、当館も(一社)長野県経営支援機構と連携した起業・経営無料相談会を実施しています。しかし、「ビジネス支援」で本当に大切なこととは、専門家の相談会を実施したり、専門資料を揃えたりデータベースを導入して情報提供をするといった方法論ではなく、どこまで当事者意識をもって課題に対応できるかという「向き合い方」であるのかなと感じました。           
     小椋理事長のお話で「仕事は大きな自己実現の手段」という言葉がありました。ビジネス支援をすることは、その人の人生を応援することなのだともいえます。図書館が地域の情報拠点であり、人と情報を、そして人と人をつなぐ場所であるのだという認識をもち、今後のサービスのあり方を考えていきたいと思います。
  最後に、見学会、講演会で貴重なお話をお聞かせいただいた講師の皆様及びご準備いただいた箕輪町図書館の皆さまに感謝申し上げます。

 

☆図書館員
  アンサンブル会では、小椋さんの、ご自分の身内のことだったのが、今や100人規模の皆さんの幸せ、老後のことまでを考える営みをされていることに感銘を受けました。まず、入居者の幸せのためにどうするかを考えるというあたりも、坂本先生と通じる考えだと感じました。シンプルですがしっかりとした理念があるからこそ、ぶれずに信念をもって進んでいけるのだと感じました。働く上での自分にとっての理念は何なのか、そして、自分の立場でできる支援、応援、幸せの作り方とは何なのか、考え続けたいと思います。
  アンサンブルのお菓子を買って帰りましたが、そこらのお菓子屋さんにもひけをとらない味で、少し甘めでしたが、添加物もなく安心していただきました。そして、幸せを感じる味でした。
  参加できてよかったです。ありがとうございました!

 

☆図書館員
  企業の見学やお話しを伺う機会は今までなく、大変貴重な経験となりました。
  アンサンブル会さんの規模にまず圧倒され、大きな理想と計画性そして愛情を感じました。
グループホームも働く場所もすべておしゃれで新しく、スタッフや制度も行き届いているようでとても居心地がよさそうでした。
  坂本先生の講演会の内容に通じるところが多く、こういった企業が成功するんだ、と改めて実感した次第です。
  このように素晴らしい企業が近くにあることを、恥ずかしながら知らなかったです。
レファレンスで、地域の歴史や文化を調べる機会は多く、地元のことをもっと知らないと、
とは思っていましたが、企業についても知らないと、ビジネス支援はおろか市民の皆さんのお役に立てないなあ、と改めて実感しました。
まずは、雑誌広告制度に契約していただいている企業さんを知ることから始めたいと思います。
  貴重な機会をいただきましてありがとうございました。

 

☆図書館員
  施設の見学会や説明会というと、時間が限られているので淡々と進めるようなイメージがありました。しかし、小椋さんのお話は人の生き方についてお話しなさっているようで、その熱意に時間があっという間に過ぎていました。自立の条件が誰にでも当てはまること、それは障がいを持っていても同じだということにハッとさせられました。
  そして、見学した中で印象的だったのは、会う皆さんが「こんにちは!」と朗らかに挨拶してくれたことです。挨拶するということは、他人と関わろうとしているということです。図書館にいらっしゃる障がい者の方も挨拶してくれますが、出来ない方もいます。アンサンブルは、他人と関わっていこうと積極的になれる場所であることを垣間見たような気がしました。
  そしてそれに続く坂本先生の講演でも、やはり人の生き方を聞いているようでした。企業経営は、人の心情に触れることなく合理的に機能させることが多いですし、多くはそれを受け入れています。その結果無理をして心とからだのバランスを崩す人もいます。けれど、そうではなく会社を運営する方法はあるのではないかと思います。
  ただそれには「他にはないいいものを作っている」という条件が必要です。メーカーはいいですが、商社や小売店は厳しいと思います。売り先から「最終消費者はもっと安い方がいい」などと要求されるからです。そうでない取引先とだけ付き合えばいいですが、そうすると売上が確保できないし…。と、ここまで考えふと思いましたが、最終消費者である私たちが安さを求めなければいいのだと気づきました。ということは、一人一人が安さや速さばかり求めなければブラック企業は減り、もしかしたら電通社員で過労死した女性は亡くならなかったかもしれません。遠い手が届かない場所のことではなかったのですね。
  菓匠Shimizuの清水氏が夢ケーキを始めたきっかけは、伊那で事件が起きたことがきっかけだったと仰ってました。きっと世間で起きていることは自分たちとも繋がっていると、だからお菓子屋としての責任を果たしてないんじゃないかとお考えになったのではないでしょうか。
  3人のお話に共通していたのは、どれも周りの人を大切にするということだと思います。それこそ清水氏が話された、「夢の種類は2つある」うちの周りの人が幸せでそれを見て自分も幸せ、ということです。
  司書が仕事をする中での喜びは、これに近いものがあると思います。利用者の求めている資料を手渡して喜んでもらえたら嬉しい。そしてそれが利用者の成長や発展に繋がれば、本当に良かったと思う。
  今回の講演や見学を通して反省したのは、アンサンブルさんや菓匠Shimizuさんのような「人を大切にする」企業を知らなかったということです。ビジネス支援で地域の産業を支援するならば、高森町にもきっとあるであろうそういった企業を探し、それを利用者に伝えることで、もっと地域の人々が憂いなく暮らせるきっかけになるのではないかと思います。

 

☆図書館員
  アンサンブル松川は自宅から車で5分ほどのところにあり、高校生ぐらいの時から建物が一つ増え、二つ増え、事業も広がって行くのをずっと見ています。また小椋さんの娘さんは私と同世代ですから、小学生時代、今でいう特別支援学級にいた子が、養護学校卒業後、アンサンブルができたから行ってみる、とお菓子作りの仕事を始めたという話をあの頃よく聞いたのを覚えています。昨日いただいたパンフレットにもその中の一人が写真に写っていました。
  小椋さんに対する批判を聞いたこともあります。「素人のお菓子をあんな値段で売るなんて」という言葉も聞いたことがあります。実際はパウンドケーキもクッキーもとてもおいしいのですが…。
  私も「世の中の会社がこんなにつぶれているのに、ここはどうして大きくしていけるのだろう」とずっと思っておりました。もちろん福祉事業ですから、補助金もあり、経営としては会社とは違うだろう…そんな風には勝手な憶測を持ちながらです。しかし、昨日そのしくみと工夫を知り、小椋さんの生の声を聞いて、アンサンブルについての理解をすることができました。
  坂本先生のお話も、本で読んでいたエピソードも心のこもった語りで伺うと、その素晴らしさがより伝わってくるように思いました。会社や経営について少しでも理解を深められたらという思いで聞き始めましたが、途中から司書というサービス業についている自分が、本当に利用者の期待に応えられているのか、利用者と感謝し合える関係になれているのか、と自分自身の働き方について自信がなくなり、背筋の寒くなるような思いもありました。坂本先生の本をまたよく読んでみたいと思います。
  菓匠シミズの話もおもしろかったです。お菓子のおいしさはもちろん有名で私たちもあこがれのケーキです。しかし「シェフ、超厳しいんだって」ということでも有名なのです。でも昨日の率直なお話を聞いて、ああ素晴らしい人だと思いました。
  講演会に市役所の同期が参加してくれたのには私も驚きでした。私は1か月ほど前にちらっと概要を歩きながら話しただけでしたが、中小企業診断士のメーリングリストでも流れていたし、私が参加するなら行ってみようと思ってくれたようです。同じ話を聞いた、という経験は、きっとこれから協力していくのに、よい材料になるかもしれない、と感じました。
  まだしばらく、システム関連の業務がメインになりますが、日々のカウンター業務を大切に、利用者第一を貫けるように頑張りたいと思います。

 

☆社会保険労務士(人を大切にする経営学会会員)
  (社福)アンサンブル会は、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」受賞式で小椋理事長の御講演を聴いて以来訪れたいと思っておりましたので、この度の機会は、「待ってました!」というところでした。
  私は「日本キャリアデザイン学会」の会員でもありますので、当日夜のテーマにも関心がありました。事前に菓匠Shimizuさんを訪れることができたことによって竹内先生と清水社長のお話を立体的に捉えて聴くことができたことは収穫でした。
   坂本先生のお話は、何時お聴きしても、人に対する強い愛情、社会的正義感に溢れており、没頭して聴いてしまいます。11/26、12/10に続いて短期間のうちに三度も聴講したのは初めてですが、経営の真贋を見極められるようになったのも私には先生のお導き大なるものがあります。
  同乗させていただいた参加者のご配慮で思いがけなくも伊那食品工業(株)も訪れることができ、この度の長野行きを心豊かにしてくださいました。
  快晴に恵まれ、美しい信州の空気を吸うことができ、開通して今月で50年目という特急「あずさ」にも乗ることができましたし、まったく有意義な約二日間でした。
  事務所に戻ってすぐ、13日に労災事故が発生した会社に向かいましたが、長野から気持ちよく戻ったせいか、意外と心静かに運転することができました。

 



アンサンブル会 小椋理事長講演と施設見学

 

菓匠Shimizu清水社長の案内で見学と買い物

 


箕輪町図書館 坂本光司教授講演会

以上


開催報告書はこちら(PDF)