ALA大会で日本の事例を発表しました!

2019年6月20日から米国ワシントンD.C.で5日間にわたって開催されたアメリカ図書館協会(ALA)の年次大会で、日本の図書館事例の発表が行われました。

この事業は、ビジネス支援図書館協議会(BL協議会)のグローバルグループのメンバーが中心になって実現したもので、BL協議会は本事業に対し、100万円を拠出しています。

ALAの年次大会は、世界50か国から2万人を集める、世界最大級の図書館関係イベントで、ジャパンセッションは6月22日(土)午後2時半(現地時間)から行われました。

120人の会場に30-50人の立ち見(床に座り込みも!)が出る大盛況でした。

発表は、以下のような内容で行われました【タイトルをクリックすると、当日、使用されたパワーポイントのスライド(一部修正)が見られます】

テーマ:革新的なアイディアで図書館を変革する!よりよい地域づくりに貢献する日本の公共図書館活動

【発表1:イノベーションは日本の公共図書館をどのように変えてきたか】
田村俊作(慶応大学名誉教授/ビジネス支援図書館推進協議会理事)

人口減少や高齢化が日本の社会問題となっていること、そのうえで図書館が予算削減や人員カットに直面していること、でもその中で、図書館員たちが知恵と工夫をこらした革新的取り組みを行なっていることを紹介しました。ウィキペディアタウン、タヌキの出現地図作り、ビブリオバトルなど、日本のユニークな取り組みに、会場からは笑い声も。「日本の図書館の概要を伝える素晴らしいイントロダクション」というフィードバックをいただきました。

 熱心に聞き入る聴衆

【発表2:小さな町の図書館が地域のハブになるまで】
手塚美希(岩手県 紫波町図書館)

町の紹介ビデオや美しい写真を使いながら、紫波町図書館が取り組んできた、町の人を巻き込んだ展示の展開、農村へのアウトリーチ活動などを紹介しました。人と情報・人と人を繋ぎながら、町のハブとなる司書の役割を示しました。アンケートでは「農村地帯で働いている同僚に、このスライドを見せます!」「展示で町の人を紹介していくアイディアが楽しくてグレイト!」「図書館が伝統的枠踏みを超越し、社会的経済的豊かさを産み出す触媒になっていることに感銘」といった反応が聞かれました。

【発表3:超高齢化社会の認知症にやさしい図書館づくり】
松田啓代(鳥取県立図書館)

高齢化の先行する鳥取県で、図書館が取り組んできた医療健康サービス、特に「認知症にやさしい図書館づくり」について紹介しました。「音読教室」には多くの反応があり、自分の図書館でもやってみたい、という声が多数、寄せられました。医療団体との提携や闘病記文庫などは、アメリカでも取り組みが広がっていますが、「高齢化先進国」日本での図書館事例に、先進国はみなこれから日本の後を追っていくことになる、貴館の取り組みを参考にしたい、と高い評価が寄せられました。

【発表4:将来の街のリーダーを育てるビジネス支援活動】
土井しのぶ(広島市立中央図書館)

広島市立中央図書館のビジネス支援サービスによって、町に数々のビジネスが生まれていること、また高校生のビジネスプラン作成を支援し、全国グランプリで賞を受けたことなどを紹介しました。「こんなサービスを受けられる利用者は幸せ」「図書館が地域に何ができるかを示した」などの称賛の声をいただきました。日本のビジネス支援サービスは、アメリカの図書館をモデルとしてBL協議会が1999年に立ち上げたものですが、日本で行なわれている活動が、いつの間にか“本家”をしのぐレベルに達していたという事実に、私たち自身も驚きました。

ちなみに今回の発表者3名はいずれも、「ビジネスライブラリアン(BL)講習会」の卒業生です(田村先生はBL協議会の理事で、BL講習会の講師を務めています)。卒業生たちは、講習会で学んだことを生かし、いずれも日本の各地で活躍中です。それは街づくりだったり、医療・健康サービスだったりと、必ずしも「ビジネス支援」には限定されません。しかし、図書館界で、こうした優秀な人材が数多く育ってきていることを、非常に喜ばしく感じ、BL協議会が、その一端を担えたことを、心から誇りに感じています。

ジャパンセッションの詳しい内容は、11月12日、横浜パシフィコで開催される図書館総合展で報告されます。